小説
「じゃあ、いくよ?」
「うんうん!つかさ、早くお願い!!」
期待の眼差しをつかさに目一杯浴びせるこなた。
つかさが左手に握っているのは先ほど、オヤカタに譲り受けたモンスターボールだ。
その中身を確認しようと、切株の上に立ち、無駄に意気込むつかさ。
それを見守るかがみと瞳をきらめかせるこなた。
「えいっ!」
つかさが思い切ってモンスターボールを投げる。
すると、赤い光と共にそのポケモンが姿を現した。
「カゲ―!」
元気に出てきたのは尻尾に温かそうな火を灯すトカゲポケモンのヒトカゲだ。
「うわー。これ見たことあるよ?確か・・・ヒトカゲだっけ?」
「そうよ?よかったじゃない。私はもっとゴツイのが来ると思ってたわ!!
どうやらかがみはこのヒトカゲをくれた人物の事を意識していたため。岩や鋼タイプといったイカツイポケモンを想像していたらしい。
「ヒトカゲかぁ!!人気はあったけど、初代の方じゃまず最初に選ぶ人はいなかったよね?」
「確かに・・・。私はゼニガメだった気がするわ。」
「でも甘いなかがみん!私は敢てヒトカゲで挑んだよ?」
「でもそれじゃ、最初のジム戦とかきつくなかった?イワークとか・・・。」
「相手が”がまん”してる間にコラッタが必死にしっぽ振って防御力ガンガン落としてたからね?後は進化したリザードでゴリ押しよ!!」
「はぁ・・・私ならバタフリー辺りでも育てるがな・・・。」
そんな会話をしてるこなたとかがみを尻目につかは嬉しそうにヒトカゲを撫でたり、お話したりと確実に親交を深めていく。
「そうだ・・・。君の名前はカゲちゃん・・・カゲちゃんにしよう!!」
「カゲェ!!」
どうやらヒトカゲの方もその名前を気にいったようだ。
「全くつかさはああいう小動物チックなものが好きね?早速名前なんてつけちゃって・・・。」
「あれ〜?かがみんだってチコリータのこと”チコ”って愛称で呼んでるじゃん?」
つかさたちの様子を微笑ましく見ていたかがみにこなたがナメクジのようにかがみの背に擦り寄り、頬を突っつきながらからかう。
「あ、あれはただ略しただけよ!!呼びやすいし!!」
紅潮した顔を隠すようにしながらかがみがこなたに反論をかける。
まぁ特に意地を張るようなことではないのだが・・・
「ねぇ?お姉ちゃん、こなちゃん?」
つかさの呼びかけにようやくこなたはかがみの背から離れ、つかさの方を見た。
当のかがみはようやく離れたこなたに安堵のため息をつきながら自分もつかさの方に目をやった。
見るとつかさは興味深そうにヒトカゲの尻尾に注目している。
「見て見て!この尻尾の炎、ロウソクみたいじゃない?こんなの見てるとフゥと消したくなっちゃうよね?」
「ちょっ・・・おまっ!!」
慌てて、こなたとかがみがつかさを大急ぎで止めに入った。
その時、このヒトカゲ・・・カゲちゃんはこのトレーナーに対し一抹の不安を覚えたに違いない。
らき☆ぽけ
第5話「つかさのポケモンゲット作戦!!」
「あぁ!!」
昼食中にこなたが急に大声を上げた。
驚くつかさとかがみ。
つかさは驚いて、弁当のおにぎりを一つ落としてしまった。
「なに?どうしたのよこなた!?」
「もうびっくりしちゃったよぉ〜!」
何事かと思い、二人してこなたに目線を向ける。
すると、こなたが左手にあるものを持っていた。
かがみにはそれがなんなのかすぐに分かった。
「あんたそれ・・・」
こなたの手に握られていたのはモンスターボールを模ったペンダント。
そう、この森に入る途中でこなたが老婆から預かったものだ。
そして、山賊のオヤカタに渡すはずのものでもあった。
「すっかり忘れてたよ。」
「全くあんたは・・・。今から戻るなんていやよ?」
「仕方ない・・・。今度会ったら渡そう。」
そう言うとこなたは再びそれをポケットに入れた。
「あ、見て見て!!」
昼食を終え、一休みしていると、つかさがあるものを発見し、声をあげる。
つかさの見つけたものはキノコの房のような形をしたポケモンだった。
「あれ、キノココじゃん?」
「見たことないかも・・・。」
金銀世代の人間のかがみは珍しそうにキノココを見る。
「あれは、キノココっていって草ポケモンの一種だよ?”キノコのほうし”とか強力だよ〜?」
「”キノコのほうし”って?」
「相手を眠らせることのできるキノココとパラスの専用技だよ?」
「へぇ・・・でも、なんか弱そうね?」
「油断大敵だよかがみん?進化したら格闘タイプが入ってかなり強くてイケてるポケモンに・・・!!」
「・・・可愛いなぁ・・・あれ。」
ピョンピョンと跳ねながら移動するキノココのその容姿につかさは一目惚れしてしまったらしい。
「そんなに欲しいんならゲットしたらいいじゃん?」
キノココに見入るつかさにこなたが後ろからアドバイスをしてやる。
「ゲ、ゲットって?」
つかさはこなたの言ってることがよく分からないようだ。
そこはかがみが丁寧にポケモンゲットの仕方を教えてやる。
「じゃあ、このモンスターボールを投げたらいいんだね?」
「そ、でもまずは弱らせて・・・」
しかし、かがみの説明を最後まで聞かずにつかさはモンスターボールを手から離した。
しかし、肝心のキノココにはボールは当たってない。
というかキノココは投げられたことにも気付いていなそうだ。
「えーと・・・ボール、どこ行っちゃったんだろ?」
辺りをキョロキョロと見渡すと、こなたがいち早く、それを見つけた。
ボールはキノココの右10メートルらへんに転がっていた。
「悪投球ね・・・」
照れるつかさに呆れるかがみ・・・。
しかし、こなたが何かに気づいた。
よく見るとつかさの放ったボールがグラグラと震えている。
そして、キ―ンという音と共にその動きは止まった。
急いで駆け寄るこなたたち。
「ま、まさか・・・私の投げたボールが偶然ここにいたポケモンに当たったんじゃ?」
「でも、流れ弾なんかで捕まるなんてどんな間抜けなポケモン・・・」
「まぁそれは出してみたら分かるでしょ?」
そう言うとこなたはボールを拾いつかさに渡した。
早速つかさはそのボールからゲットしたてのポケモンを出した。
「ハ〜ネェ!!」
つかさがたまたまゲットしたポケモンはわたくさポケモンのハネッコだった。
「あ、ちょっと可愛いかも!」
そういいながらつかさはハネッコを持ち上げる。
どうやらお気には召したようだ。
ハネッコを持ち上げたつかさはある事に気づき驚いた。
「軽い!!この子軽いよ?」
そう言いながらつかさは高い高いをしながらハネッコの軽さをアピールする。
「まぁ見るからにふわふわしてそうだけど・・・」
「知らないのかがみ?ハネッコの重さは0.5Kgだよ?」
「うそっ!軽すぎない?」
「その軽さのせいでよく風に流されるらしいよ?」
「うわっ・・・つかさみたいなポケモンだな。」
「かがみ、今流されるってだけで言ったでしょ?」
「い、いいじゃない!!雰囲気とかはどことなく似てるんだしさ」
「確かに・・・。ある意味つかさにゲットされるのは宿命だったんだろうね?」
「よーし、この調子でキノココもゲットだ!!」
ハネッコのゲットに調子に乗って来たつかさは再びキノココに目を向ける。
そして、大きく息を吸い込みモンスターボールを構え、今度は慎重にキノココに狙いを定める。
「いくよぉー!えい!!」
そうするとつかさはモンスターボールをキノココめがけて思いっきり投げた。
「キンノッ!!」
しかし、キノココは向かってくるモンスターボールに対し、”ずつき”でそれを跳ね返した。
そして弾かれたそのボールは案の定、つかさの額に命中してしまう。
「ギャフッ!!」
キノココはそのまま森の奥へと消えてしまった。
「うぅ・・・痛いよぉ。」
「大丈夫つかさ?ポケモンは弱らせてからゲットしなきゃダメじゃない?」
その場にへたり込むつかさにかがみが救いの手を差し伸べる。
かがみの手を借りて、ようやく立ち上がるつかさ。
「弱らせるって?」
「そりゃ・・・攻撃するのよ・・・。相手を・・・」
「えぇ・・・それじゃかわいそうだよ!!」
攻撃という言葉に過剰に反応してしまうつかさ。
しかし、かがみはそんなつかさに少しきつめの喝を入れる。
「あんたね!そんな甘いこと言ってるとこの世界で生きていけないよ?もっとシャンとしなさい!!」
「う、うん・・・。」
とりあえずは首を縦に振るつかさ。
厳しい姉の言葉に背中押され、草むらに目を凝らす。
「あ!!」
草むらが微かに揺れ、そこからお目当てのキノココが現れた。
「ほら、つかさ!ファイト!!」
「う、うん!!ハネちゃん出てきて!」
するとつかさはさっきゲットしたばかりのハネッコをキノココの前に出した。
そのつかさの選択に不安を覚えるこなたとかがみ・・・。
「あの子・・・ゲットしたばかりでちゃんと使いこなせるのかしら?」
「まぁみてようよ?ヒトカゲも似た様なもんじゃない!!」
「まぁそうだけどさぁ・・・。」
相性的にはほぼ互角・・・。
むしろ飛行が入ってる分若干ハネッコの方が有利といえるだろう。
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
にらみ合う3者・・・。
一向に動こうとしない3者・・・。
そして、にらみ合うこと一分。
先に動いたのは・・・つかさの口だった。
「お姉ちゃん、この子何が使えるの?」
かがみの不安的中!!
こなたはそんなつかさの可愛さについつい口元がにやけてしまう。
「全く・・・えと図鑑図鑑と・・・」
呆れながらかがみは鞄からポケモン図鑑を取り出した。
「えーと・・・”やどりきのたね”と”しびれごな”に”たいあたり”・・・そして”とびはねる”かな?」
「わ、わかった!!」
つかさは納得したように再び視線をキノココに向ける。
「えーと・・・ハネちゃん、”たいあたり”!!」
すると、ハネッコは軽やかにステップを踏みながらキノココめがけて突っ込む。
しかし、キノココは軽く避けると仕返しにハネッコに”ずつき”を喰らわせる。
そのまま吹き飛ぶハネッコ。
「ハ、ハネちゃん!!」
「ハネ〜・・・」
立ち上がるも少し体をふらつかせるハネッコ。
「危ないよつかさ!!」
「へ?」
気付いた時には既に遅くキノココのとどめの”ずつき”が迫っていた。
直撃を受けるハネッコは倒れそのまま戦闘不能になっていた。
「あぁ・・・ハネちゃん!!」
ハネッコを抱き抱えるとつかさをよそに再び、森の奥へと姿を消してしまった。
「うぅ・・・ごめんねごめんね?ハネちゃん!!」
半泣きになりながら傷ついたハネッコを労わるつかさ。
「むぅ・・・やっぱりだめだったね?」
「まぁ、いい経験にはなったかな?」
そうは言うもののやはり今のつかさの事をみると少し手を差し伸べたくなってしまう。
姉として・・・友人として・・・。
「よしよし。じゃあ、この私がつかさの為に人肌脱いであげようじゃないか!!」
「こなちゃん?」
そう言いながらこなたは辺りを見渡す。
すると、こなたの傍の木の上からこなたの頭に何かが落ちてきた。
「ギャフン!!」
「レディ!!」
頭と頭とでごっつんこする二人。
「なにやってんだ?」
「いや・・・ちょっと予想外だった。」
頭をさすりながら落ちてきたレディバに目をやる。
「よし、これから私があのレディバをゲットしちゃる!!」
「レディ?」
レディバも頭をさすりながら、何事かと辺りを見渡す。
そして、こなたを見ると、ようやく自分の状況が理解できたらしい。
「レディバ、勝負!!」
「レディ!」
なんとレディバは逃げることなく、自分に挑もうとしているこなたの目を見て戦闘態勢をとった。
「お?ヤル気満々じゃん!!面白い!カモネギ頼んだよ!!」
「カモ!!」
そう言うとこなたはタイプで有利なカモネギを出した。
「あ、アッカだ!!」
カモネギを見るなりつかさはなんだか懐かしげな声を上げた
「アッカ?」
「うん、アッカだよ!」
全てを理解したかがみはそれ以上はなにも質問せず、二人のバトルの目を戻した。
「レディーバァ!!」
まず先制をとったのはレディバだった。
レディバは背中から無数の星を出し、カモネギめがけて発射した。
「あれは・・・”スピードスター”かな?」
かがみが自分のもつ出来る限りの知識を振り絞り、技を見極める。
「カモネギ、”こうそくいどう”で全部かわしちゃって!!」
カモネギは軽い足取りでスピードスターを瞬く間に避け、一気にレディバに距離を詰める。
「”みだれづき”だぁ!!」
「カァモ、カモカモカモカモ!!」
「レディ〜バババババ!!」
カモネギがネギでレディバに猛襲をかけようとするが、レディバもそれに応戦して、自慢の6つの手足で受け流していく。
「”れんぞくパンチ”とはちょこざいな!!カモネギ”つばめがえし”だ!!」
「カモーッ!!」
カモネギは少し距離を置くと体を出来るだけ低空飛行をしながら体を地面と平行に保ち、目にもとまらぬスピードでレディバに突っ込んだ。
「レディ!!」
しかし、レディバは球体のベールに包まれ、カモネギの攻撃を無効化にした。
「”まもる”を覚えてるんだあのレディバ!!」
”まもる”を習得していたのは流石に予想外だったのか、こなたの目が少し見開いた。
「レディ〜!!」
レディバは、”つばめがえし”を無効化した直後にレディバは勢いよくカモネギに突っ込んでいく。
レディバの体はカモネギの体に直撃し、カモネギをフッ飛ばす。
「げっ!!」
攻撃したレディバも多少のダメージを受けたようで、先ほどより息が荒いのが分かる。
それに気づいたつかさが姉に心配そうに質問する。
「お姉ちゃん?レディバ攻撃したのは自分なのになんか少し苦しそうだよ?・・・」
「あぁ・・・あれは”すてみタックル”って言って相手に凄い勢いで突撃するけどその与えたダメージ分の反動が自分にも返ってきちゃうのよ。」
「え?大丈夫なのそれ?」
「まぁ、れっきとした技だし・・・。多用は禁物だけど。」
「ダイパになって、反動技が一気に増えたから困るよ・・・」
こなたはやれやれといった感じで息を漏らす。
「レディレディ!」
ふとレディバを見ると嬉しそうにピョンピョンと跳ねている。
声の感じからしてこなたを少し馬鹿にしているようにも聞こえる。
「むぅ・・・じゃあ、次はヒコザルで・・・」
しかし、レディバはそのバトルは断ったのか、こなたに背を向けてしまった。
そして、去り際にこなたを見ると目下の皮を下に伸ばし、口から下を出した。
「あ、あっかんべぇしてる・・・。」
「むむ!!」
「レディレディ!!」
レディバは少し馬鹿にしたように笑うとそのままどこかへと飛んでいってしまった。
「むむむむ・・・!!カモネギ!!これはいつかリベンジ戦だ!!」
「カモォ!!」
どうやらカモネギは”すてみタックル”をマジ受けしたもののまだ戦えたらしい。
カモネギはこなたの声に合わせてネギを天にかざし、レディバへのリベンジを誓った。
「こなちゃん、惜しかったね?ドンマイ!!」
カモネギと手を取り合うこなたをつかさが励ましの言葉を送った。
しかし、それはさらにこなたの敗北の傷を抉った。
「こらつかさ、こなたはあんたの為にやってんだからそんなこと言ってやんないの!!こなたはこの手の事では結構傷つくんだから・・・。」
さらにかがみ追討ちをかけるフォローを入れる。
「とりあえず、二人ともその辺の木からさきのみ採ってきてよ!私カモネギの治療したいし!!あ、ついでにつかさのハネッコの手当てもするよ?」
「ホントに?こなちゃんお医者さんみたい!!」
まぁこれくらいの傷なら薬塗ってきのみを食べさせるだけでいいので医者と呼ばれる筋合いは別にないのだが・・・。
わざわざ人払いさせたのは少し一人で対レディバ対策を練る為でもあった。
そんなことを知る由もなくかがみとつかさはこなたの注文通りきのみ集めに向かった。
少し歩いて5分ほどした時だった。
二人はある事に気づいた。
「ねぇ、お姉ちゃん?」
「・・・うん。」
つかさの疑問符に対し分かってるといった感じの返事をするかがみ。
「こなちゃん、どのきのみ採ってくればいいって言ってたっけ?」
目の前にあるのはカゴのみ、モモンのみ、オレンのみ等の種類様々なきのみ。
「と、とりあえず全部もって帰るか。」
そう言うとかがみはボールからチコリータとムックルを出した。
それを見たつかさは感激する。
「うわぁこれがお姉ちゃんのポケモンなんだ!」
「あ、そっか初顔合わせか!じゃ、クチート!!」
「クッチ!」
かがみはせっかくだからといった感じでクチートも出し自分のポケモンたちをつかさに紹介する。
それに合わせて、つかさもヒトカゲを出し、互いに挨拶をする。
「えっと右からチコリータ、ムックルそして、クチートよ?」
「へぇチコちゃんにムクちゃんにクチちゃんかぁ・・・はじめましてつかさです。こっちはヒトカゲのカゲちゃん!!あと、ハネッコのハネちゃんもいるからよろしくね?」
「私のポケモンにまであだ名をつけるか・・・別にいいけど。」
自己紹介もそこそこにつかさとかがみはきのみ集めを始めた。
「よし、チコは”つるのむち”!!ムックルは”つばさでうつ”できのみを取っていって!!クチートは私と一緒にムックルが落としたきのみ拾おう?」
「クチ!!」
そう言うと、それぞれ自分の役割に入っていく。
そんな光景をつかさは羨望の眼差しでみていた。
「いいなぁお姉ちゃん・・・ポケモンたちとあんなに仲良さそうで・・・」
「カゲ―!!」
そんなつかさの服をヒトカゲが引っ張った。
「あ、ごめんね?カゲちゃんがいるもんね?あと、ハネちゃんも!!」
そう言いながらつかさはヒトカゲの頭を撫でてやった。
「こら、つかさ!!さぼってないで仕事しろ!!」
「あ、うん!!・・・ってあれ?」
かがみに言われるままに立ちあがったつかさは横目であるものを発見した。
それはさっき逃がしたキノココだった。
「いた〜!!よーし今度こそ!!」
つかさは一瞬できのみ集めの事を忘れ、キノココの下へと駆け寄った。
「キノッ!?」
キノココはつかさをみると否や全力で逃げて行った。
どうやら、さっきボールを投げられたことを覚えているらしい。
「あ、待って!!」
猛スピードで逃げるキノココにつかさは慌ててキノコ子を追って森の奥へと入っていった。
つかさが消えたことに最初に気づいたのはムックルだった。
「クックルゥ!!」
「どした?ムックル?」
ムックルのただごとじゃない雰囲気にかがみは何かに感づいたように辺りを見渡す。
「げ、つかさがいない!!」
さっきまで共にきのみ集めに精を出していたはずのつかさの姿が見当たらない。
場所は知らない森・・・。
消えたのはつかさ。
かがみの表情に不安の色が濃くなっていく。
「ムックル、急いでつかさを探して!!」
「チコとクチートはこなたに知らせてきて!!」
「チッコ!!」
「クチ!」
了解したとばかりにクチートとチコリータは頷いて見せた。
そして、かがみはつかさを追って森の中に入っていった。
「遅いなぁ!かがみんもつかさも!!」
「カモォ!」
すっかり治療も済まし、暇を持て余すこなた。
「よし、みんなでなんかゲームやるか!!丁度4人いるし・・・?」
「ヒコ?」
「カモォ?」
こなた・・・こちらもある異変に気づいた。
「ハネッコいなくない?」
慌てて空を見上げるこなた。
しかし、ハネッコの様子はまるでない。
「しまったぁ油断した!!早く探さないと!!」
慌てるこなたの後ろでガサガサっという音がした。
慌てて後ろを振り返るこなた。
しかし、それはよく見なれた2体のポケモンだった。
「なんだ、チコリータとクチートかぁ。かがみどうした?」
一方のつかさは・・・
「あれ〜?ここどこだろ?」
勢いよくキノココを追いかけていたもの、途中で見失ってしまい、さらには帰り道も分からなくなってしまった。
そう・・・俗に言う迷子である。
「この世界ってなんで携帯が使えないんだろ?帰れないよ〜!!」
半泣きになりながら、アテもなくふらふらと道を右往左往・・・。
そんなつかさの足元に何かが触れた。
身を怯ませ、そのまま固まるつかさ。
そして恐る恐る足元に目をやる。
そこにいたのはビートルの群れ・・・・。
「ひゃぁあ!!」
思わず大声を挙げてしまうつかさ。
その声を皮切りに草むらから次々とスピアーが現れる。
「なに・・・ハチ?」
日本ではまずお目にかかれない大きさの蜂を目の当たりにしたつかさの表情は既に絶望しか感じさせないものだった。
腰が抜け、逃げることもままならない。
そんなつかさが腰を浮かせるのを待つこともなく、一斉にスピアーがつかさに向かっていった。
その瞬間、なぜかスピアーの動きが一斉に止まった。
向かってきていたスピアーの群れに思わず目をつむるつかさの頭上から、パラパラと赤い粉が降ってきていた。
どうやらこの粉は”しびれごな”のようでスピアーは体がマヒし思うように動けないらしい。
「あ・・・」
何事かと思い、空を見上げるとそこには少し抜けた表情でこちらに微笑みかけるハネッコがいた。
「ハネちゃん!!」
今まで青ざめていたつかさの表情がパァっと明るくなる。
ゆっくりとこちらに降りてくるハネッコをつかさはそっと受け止めてやった。
「ありがと!!お陰で助かったよ〜!」
「ハ〜ネェ!!」
一方のかがみ。
つかさを必死に探すもどこにも見当たらない。
「全くあの子は・・・」
つかさがいなくなったことに気付かなかった自分に・・・なかなか出てこないつかさにイライラするかがみ。
それに比例するかのように探し方も雑になり、頭の回転も鈍くなっていく。
そんなかがみを冷静にさせたのは空からの捜索に戻ってきたムックルだった。
ムックルは何かを言いたそうに羽をばたつかせる。
その様子からかがみはすぐにムックルがつかさを見つけたことを知った。
「お願いムックル!!案内して!」
「ムクー!!」
ムックルはやや低空飛行でかがみをつかさがいると思われる場所へと誘導する。
ムックルの誘導に従うこと数分が経ち・・・かがみは目の前にあるものを見つけ足を止めるかがみ。
それに合わせムックルも止まった。
かがみたちの目の前にあるもの・・・。
それは、ネズミ捕りのような罠に足を挟まれたミミロルだった。
「あのポケモンは?」
かがみにとって見たこともないポケモンではあったが、見るからに苦痛の表情を浮かべていたので、急いでその罠を取り外してやった。
見ると、罠に挟まれたその足は痛そうに赤く腫れあがっている。
「そうだ!確かポケットに!」
かがみは思い出したように先ほど獲ったきのみを数個ミミロルに分け与えた。
そして、持っていたポーチからキズぐすりをミミロルの足をかけてやる。
「ミンミミンミ!!」
すると、少し嬉しそうに、ミミロルはかがみに頭をペコっと下げた。
「い、いいのよ別に!!気にしないで!」
こうまで面と礼を言われたらなにやら歯がゆくなってしまう。
それがかがみという人間だ。
そんな二人の後ろから突如、怒声が響いた。
「おいこら!!そいつは俺の獲物だぞ!!」
見ると、汚らしいひげを蓄えた中肉中背の男がかがみとミミロルを睨みつけていた。
いかにもタヌキという言葉が似合いそうな容姿をしている。
男の後ろにはいかにも悪そうな顔をしているストライクがいた。
どうやらこの男のポケモンらしい。
「おめぇら!!俺の獲物に手ぇ出してんじゃねえぞ!!俺は泣く子も黙るポケモンハンターのゴンザレスだ!!命が惜しけりゃさっさと・・・」
「何言ってんの!こんな罠使ってまでゲットしようなんて性根が腐ってるにもほどがあるわ!!」
男の言葉が終わるか終わらないかのうちにかがみが強気な口調で反論する。
その言葉にカっときたのか、みるみる顔を赤くしていく。
「てめ!!女子供だからって容赦しねえぞ!!こちとらこの森に棲むっていうすんげーポケモンを捕まえに遠路はるばる来てんだ!てめぇみたいな小娘に邪魔なんかさせねえよ!!」
「”すんげーポケモン”?呆れた。この子がそのポケモンだって言うの?」
「んなわけねえだろ!!そんな雑魚ポケモンが!!そいつはついでのおまけ商品だ!!珍しい技を覚えてるかもしれねえしな!!」
男の減らず口にさすがのかがみも頭にキタのかつかさのことなど忘れて男に凄い剣幕で怒鳴り散らした。
「ふざけんじゃないわよ!!意地でも渡すもんですか!!あんたみたいなバカダヌキに!サイテーのことやっといて偉そうにくっちゃべってんじゃないわよ!!」
「ふん、ストライク!あの小娘を黙らせろ!」
「スラー!!」
ゴンザレスの指示でかがみに向かっていくストライク。
「受けて立つわよ!ムックル、”つばめがえし”!!」
「ムクー!!」
そうするとムックルは体を旋回させながらストライクに突っ込んだ。
「ストライク、”かげぶんしん”!!」
「ムク?」
突如として増える分身に困惑し動きを止めてしまうムックル。
それにはかがみも戸惑ってしまった。
「ストライク、”きりさく”!!」
動きを一瞬止めたムックルの体をストライク自慢の腕の刃は切りつける。
そのままムックルは吹き飛ばされてしまった。
「あ、ムックル!!」
地面でぐったりとするムックルに駆け寄るかがみ。
「口ほどにもねえな!!ストライク、あの女にも”きりさく”攻撃だ!!」
勝負あったとみて、男は容赦なくかがみに向かっての攻撃命令をストライクに出した。
ムックルをかばうようにストライクの盾になるかがみ。
そんな彼女の前に現れたのは先ほどのミミロルだった。
「ミ〜ミ!!」
ミミロルは自慢の長く弾力性のある耳でストライクに一撃をかました。
すると、ストライクは朦朧としながらゴンザレスの方を向き、乱暴に腕の刃を振り回した。
「な、あぶねえ!!どうしたんだストライク!!」
急なストライクの攻撃に思わず逃げ惑うゴンザレス。
「た、助けてくれえ!!!」
しかし、直も止まない攻撃にたまらずゴンザレスはそのまま逃げ去っていった。
「ふぅ・・・。」
姿の見えなくなったゴンザレスにかがみは安堵のため息をつき、そして腰を下ろした。
「怖かったぁ・・・。あのストライクに何もかも切り刻まれるかと思ったわ!」
万一ミミロルに助太刀が入らなかったことを考えると、ぞっとする。
そして、あることに気付く。
「もしかして、あのタヌキ男私の服を切り刻んで素っ裸にでもするつもりだったんじゃ・・・だとしたら最悪だわ!!」
さらなる絶望的展開にかがみは心底ほっとした。
「ありがとね?あんたのおかげで助かったわ?えーと・・・」
かがみはようやく、このポケモンの名前を知らないことを思い出した。
少し恥ずかしそうに図鑑を取り出し、このポケモンの名前を調べる。
「ミミロル・・・かぁ。」
名前もわかり、かがみは改めてミミロルに目線を合わせ、感謝の言葉を述べた。
「ありがとう。ミミロル。」
かがみのその優しい言葉にミミロルは顔を赤らめると、背を向け早足で草むらへと消えてしまった。
「あれ?」
急なミミロルの態度に唖然としていると、後ろからかがみの名前を呼ぶ聞きなれた声が聞こえてきた。
「おーいかがみん!!」
「こなた!」
チコリータとクチートと共にこなたがやってきた。
そして、その合流と共に思い出す。
つかさのことを・・・
「あぁ!忘れてた!!つかさだ!」
「ムクー!!」
かがみの声と共にムックルが再び羽根を動かした。
「ムックルあんた・・・さっきのダメージが」
「なんかあったの?」
ムックルの傷を見てこなたが少し心配そうに尋ねた。
「あぁ後で話すわ!じゃあ、悪いけどムックルもうひと頑張りお願いできる?」
「ムクー!」
そう言うとムックルはさっき自分がつかさを見つけた地点まで再び誘導する。
500メートルくらい走るとムックルが止まった。
どうやら着いたらしい。
しかし、辺りにはつかさの姿は見当たらない。
「もうここにはいないか・・・」
「そうみたいね?おつかれムックル!!」
疲労困憊のムックルをボールに戻すと、つかさがどっちに向かったのかを考えた。
すると、こなたが何かに気がついた。
それは、空の上で不安定に浮いているハネッコの姿だった。
「もしかしてつかさのハネッコ?」
「かもね?」
少しすると、ハネッコはその場で降下してしまい、その姿は見えなくなったが大体の方角は分かった。
軽く早足でそのハネッコが降下した場所に走る二人。
「御苦労さまハネちゃん!!これでお姉ちゃんたちが見つけてくれるよね?」
迷子になっていたつかさは、ない知恵を絞りに絞った結果、ハネッコを使って自分の現在地を知らせようと考えた。
早速実践し、あとは二人がこの場所に来ることを祈るだけとなったため、つかさはまるでもう大丈夫と安心したように手頃な切株に腰をかけた。
「来るかな〜・・・ん?」
こなたとかがみを待ちながら暇そうに足をブランブランさせていると、つかさのいる道の脇の草むらが怪しく動いた。
「あ・・・!!」
そして、出てきたのは本日3度目のキノココだった。
またまた、嬉しそうに立ち上がるつかさに対しキノココは少し困ったようにため息をついた。
どうやら先ほどからつかさが目星をつけているキノココらしい。
「よーし!ハネちゃんもう一回お願い!!」
「ハネネ〜!!」
当然といえば当然だがあちらの都合お構いなくにゲット作戦を始めるつかさ。
最初は驚いていたキノココも腹を括ったのか覚悟を決めたようにつかさを迎えうつ姿勢にうつる。
「ハネちゃんジャンプ!!」
迎え撃つ姿勢だったキノココの不意を突くかのように大空へとジャンプするハネッコ。
「”しびれごな”!!」
「キノォ〜・・・」
上空から舞い散る”しびれごな”にキノココはマヒしてしまう。
「”たいあたり”!!」
ハネッコはしびれて動きが鈍くなっているキノココめがけて突撃する。
なんとか応戦しようとするが、体が痺れていて技がうまく出せない。
そのままモロの”たいあたり”をくらってしまい吹き飛ばされる。
「やった!いけぇモンスターボール!!」
今度は慎重に必要以上にキノココに近づきボールを投げるつかさ。
モンスターボールはキノココを吸い込み、カタカタと音を鳴らしながら震えている。
不安そうに見つめるつかさ。
そして、その内、モンスターボールは完全に沈黙した。
それを見て不安だったつかさの表情が明るい笑顔でいっぱいになる!!
「やった〜!!」
「”やった〜”じゃないわよ!!」
喜び、跳ねるつかさの頭を誰かが軽くごついた。
ハッとなり慌てて後ろを向く。
そこには、はぐれたかがみとこなたの姿があった。
「お姉ちゃん、こなちゃん!!」
二人の姿を見てまた喜ぶつかさ!
それとは裏腹にムスッとした表情のかがみではあったがつかさのそんな笑顔と大切に握られているモンスターボールを見ると怒るに怒れず、その内どうでもよくなっていた。。
「こなちゃん、ほらほらキノココ捕まえたよ?」
「よかったじゃん!・・・ってこれで私がまたビリか!!」
こなたは再び自分の劣勢に気づき嘆き始めた。
それと同時に闘志を熱くさせていた。
「こうなったら、あのレディバ絶対ゲットするもんね!」
「頑張って!!・・・ってあ!」
つかさの指差す先に例のレディバがいた。
幸運にもあちらはこちらに気付いてないようだ。
こなたは目標物を確認すると、不気味な笑いを浮かべるとともにすごい速さでレディバを追いかけていった。
そして、かがみが気づく。
「あいつ・・・あいつまで迷子になるつもりか!!」
あきれ果てたかがみははぐれないうちに急いでこなたの後を追う。
それに慌ててつかさもまた迷子にならないようにかがみの後を追う。
果たしてこなたはレディバに無事リベンジを果たすとができるのか?
というか、いつこの森をちゃんと抜けるのか・・・
続く。
あとがき
どもぽちゃです。
つかさの回でした。
この回で色々と今後すべきことが自分の中で定まってきました。
やっぱり多少は重くなるかもだけどドラマが欲しいんで・・・。
今回からこなたやかがみのポケモン談義をチョロチョロ加えてます。
それぞれのキャラのそれぞれの観点から見たポケモンたちを大いに語って・・・るかもしれない(笑)
次回もまだ森から出ません!
そして、オリジナル重要キャラも出ます!!
そんなに濃く書かないと思いますが・・・。
お楽しみに!!
じゃ、また!!